静雄が部屋から出て池袋の街を赤い顔で足早に歩いていると、こんな時は誰にも会わなければいいと思っているときに限って知り合いに会うものだ。
案の定高校からつきあいがある角田が声をかけてきた。
静雄は普段は立ち止まったりしないのに、この日は動揺していたせいかなぜか角田の前で立ち止まってしまった。
「おい、何かあったのか?」
池袋最強の男にかける言葉とは思えないが、友人として声をかける男という立場上間違ってはいない。
「いや、どうして?」
逆に自分が普段とどこか違って見えるのかが気になった静雄は角田に聞き直した。
「あ、いや、何かこうムンムンしてねぇか?」
「ムンムン?」
もしここに普段角田がつるんでいる奴らがいたとしたら多分その表現について色々な言葉が飛び出しそうな表現だった。だが、角田の表現もそれほど的を得ていない訳じゃない。むしろそのものなのかもしれなかった。
「ああ、なんつーかその、お前が女ならかぶりつきたいくらい色気がでてるっつーか、あ、いや俺はそっちはちがうけど・・でも今ならできそうつーか・・・あれ?何言ってんだ俺」
角田は少ししどろもどろに説明した。
どうやら静雄の体からフェロモンが溢れ出ているらしい。
あのノミ蟲野郎が何かしやかったのか?静雄の中で不振感が湧き起こってきた。
一体どうしたというのだろう?角田が静雄の手を握っていた。
「おい?!」
「あ、いやなんだ・・・ちょっと静雄が変だからこまま家まで送ってやりたくなったんだが・・・迷惑か?」
「迷惑だ」
角田の妙な言葉に静雄は即答した。
角田はそれでも静雄の手を離そうとはせずにその手を引いた。
引かれた拍子に静雄の体は角田の胸に倒れ込んだ。
「ん?やっぱり静雄良い匂いがする」
クンクンと鼻先を首筋に押しつけられてそれだけで静雄の体は熱を持っていく。
「よせ、あっちへいけ!」
「別に俺はそっちには興味ないんだよ。けど・・・」
角田は自分の股間に視線を落とす。静雄もつられてそれを視線で追ってみるとこんもりと盛り上がっている。
こいつまでまさか?!
静雄は角田の胸に両手をついて離れようとするが角田もそこそこ力があった。
「まぁ、試しに1かいぽっきりつうのはどうだ?」
と静雄の部屋に着いてくる気満々だ。
「あっ!ドタチン見っけ!!」
そこに幸か不幸か角田が普段つるんでいる遊馬崎と狩沢が姿を現した。
「あれれれれれっ~何してるのかな?ドタチン静ちゃんに手出すと臨也に嫉妬されちゃうよ~」
狩沢は角田の掴んだ静雄の手を見てニヤリと笑った。
<続く>
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