暑くもなく、寒くもないというのに部屋の中で振るヘルメットに革のライダースーツを着込んで読書をしているのは、普段は首なしライダーと恐れられている運び屋のセルティ・ストゥルルソン。
彼女はこのマンションの住人である岸谷新羅と同居している。
だが、それは恋愛関係ではなく20年も前、新羅が幼かった頃からのことだった。
「セルティ、何を熱心に読んでいるんだい?」
優しいトーンで尋ねる新羅にセルティはその本を後ろに隠す。
「あれぇ~僕に言えないような本なのかな?例えば医学に目覚めちゃったとか」
するとセルティは目の前のパソコンのキーボードを軽やかに叩いた。
「お前じゃあるまいし、そんなもの誰が読むか?!」
「じゃあ何かな?」同時に新羅の手にはセルティの手にしていた本が握られている。
慌ててセルティの体か黒い影が飛び出してその本を包み込んでしまった。
「そんなに隠されると、意地でも見たくなるのが人間って奴じゃない?」
「そもそも私は人間じゃない」カタカタとキーボードで反論するセルティ
「俺は人間だよ」「お前を人間だとは認めん」
「じゃあ俺はなに?セルティ」新羅の顔がセルティのヘルメットに近づくと、セルティはその本を包み込んでいた黒い煙のようなものを解いた。
「あっ・・・」
「せルティ!!!!これは何?!一体どうしたの?あ、もしかして池袋にいる腐女子とかに影響されちゃったのかい?」
セルティの本を手に持ってその表紙を見ると新羅は目に手をあてて嘆いた。
その表紙には2人の男が裸で抱き合っている・・・BL小説というものだ。
ここ池袋には乙女ロードといって腐女子と呼ばれる女性達が好む本やDVD、CD等を取り扱う店が多く存在している。セルティの読んでいる本はそういった腐女子達が好む男同士の恋愛小説ボーイズラブだった。
「あ、いや実は狩沢から勧められたのだ」
「もう、そんな人たちと付き合っちゃいけませんって僕は言わなかったかい?」
新羅がヘルメットに顔を近づける。
セルティはまるで存在しない頬を赤く染めるように新羅の前から慌てて立ち上がった。
「そんなことは初耳だ、第一私が誰と付き合おうとお前に迷惑さえかからなければ問題はないではないか」
新羅は素早く打ち出される画面の文字に目を走らせた。
「そうだね、僕はこれ以上は口出ししないよ」
新羅はそう言ってセルティに抱きつこうとしてセルティは立ち上がって新羅は
そのまま転ける。
「ところで新羅」
セルティはPDAを新羅の目の前に出す。
「なんだいセルティ」
「お前は静雄は本当に臨也のことを好きで2人は付き合ってると思うか?」
それを読んだ新羅は絶句した。
なぜなら新羅にとって臨也も静雄も同じ高校の同級生だったからよく知っている。
一体どこからそんな根も葉もないことを言い出したかのかとセルティの見あたらない顔を見つめていた。
「なんだつまらん。静雄に直接聞いてこよう」
とセルティはどこかへ行ってしまった。
「セルティに変なことを教えたのはどこのどいつだ!!」
<静雄につづく>