静雄は早く終わったので弟の幽の住むマンションを訪れていた。
今日は休みかどうかなんて知らなかったが、いなければそのまま帰ろうと思って、とりあえず尋ねてみたのだった。
エントランスのところでインターホンを押すと幽の声がした。
「お、いたのか」
「うん」
会話の少ない幽はそれだけ言うとエントランスのロックを解除した。
「悪いな、お前忙しいんだろう」
と言うが幽は何も言わずにテーブルの上にグラスを置いて牛乳を注いだ。
静雄はそれを見るとクスッと笑った。
「そうだな、少し落ち着こう」とグラスに手を伸ばした。
そんな静雄の手に幽が手を重ねた。
「どうした?いじめられたのか?俺がそいつのこととっちめてやろうか?」
「兄さんこそ何か少し変。何かあったの?」
こう見えても幽は結構鋭い。静雄の心境を読み取ることにかけては誰にも負けない。
といっても静雄の場合誰が見ても感情は一目瞭然でわかりやすい男なのだが。
幽は静雄の手を握る。
「あ・・いや・・別に、お前さあ」
幽は黙って静雄の顔を見上げる。「俺のことどう思う?」
すると幽は手に持っていた静雄の手に口づけた。
静雄は慌ててその手を引っ込めた。おいおい弟なんだから慌てることはねぇじゃねぇか・・・
けど今のは何だ?!何なんだ幽・・兄ちゃんの手にキスなんかするんじゃねぇぇぇぇぇ!!!
「大嫌いだけど、大好き・・・兄さん好き」
幽はそう言いながら静雄にべったりと体を押しつけた。
「そうか、俺もお前のこと好きだ。大好きだぞ」静雄はあくまで兄弟のそれを伝えるが、幽は違った。
「良かった。じゃあ俺とHしようよ」
「そうだなH・・・かすか・・・待て!それはちょっと違う。そうじゃないんだ」静雄は幽の両腕をそっと掴んだ。
「あっ・・・痛い」
しまった!!幽の腕を折っちまったか?「幽大丈夫か、兄ちゃんに見せてみろ」
幽は静雄の着ていたシャツのボタンを全て外すとバッとシャツを脱かせた。
「うん・・よく見て」静雄の平らな胸板にいきなり吸い付いた。
「か・・かすか!!」静雄は慌てて幽に触れようとするが、ヘタに触れて怪我でもさせたら大変なことになると思うと触れることができない。
「よせ、ばか!お前・・・」
「だって兄さんが言い出したんじゃないか、どう思うって聞かれたから正直に押し倒したいって思ったんだよ」
「かすか?!」
幽は静雄の背中に両腕をまき連れながらチュッチュッと音を立ててその胸に口づけを落としている。
不覚にも心地よくなりそうなのを懸命にこらえながら静雄は幽の顎を捕らえた。
「かすか!!」
真っ直ぐにその瞳を見つめてそう言うと幽は静雄から離れた。
「冗談に決まってるじゃない」
またいつもの無感動な幽に戻っていた。
静雄は衣服を直しながら
「帰るわ、邪魔したな」と幽の部屋を後にした。
「ふん、本気だったのに・・・」
静雄が出て行った部屋で幽は呟いた。
<続く>
読了、お疲れさまでした。
エロとか鬼畜とかかいておきながらなかなかなくて
スミマセン・・・只今少し自重気味です。
そのうち書きたいと思います。